

「むし・ほし・いし」をテーマに、小学5年生から中学3年生を対象とした2泊3日の合宿形式とオンラインで、自然に関する学びの場を提供している。
東京大学大学院工学系研究科では、ヒューリック株式会社との社会連携講座として「真にインクルーシブな自然体験学習システムの創成」の取り組みを進めています。その実証イベントとして開催されているのが「自然に学ぶみんなの学校」です。
このイベントは、小学5年生から中学3年生を対象とした2泊3日の合宿形式で、2023年から毎年夏に開催されています。「むし・ほし・いし」をテーマに、子どもたちが自然の中で学び、体験することに加え、オンラインでも同様の場を設けることで、多くの子どもたちに学びの場を提供しています。
今回取材したのは、東京大学大学院工学系研究科・客員研究員の藤永公一郎さま。自然に学ぶみんなの学校のオンライン会場でoviceを活用している理由や、今後の展望について伺いました。

─まず、「自然に学ぶみんなの学校」について教えていただけますか。
藤永さま:このイベントは、ヒューリック株式会社様と東京大学工学部工学研究科が設立した社会連携講座の一環で、「真にインクルーシブな自然体験学習システムの創成」というテーマで実施しています。環境や境遇にかかわらず、全ての子どもたちが自然体験活動に参加できるような、新たな学習環境づくりを目指したものです。

テーマは「むし・ほし・いし」。私たちの研究室が、資源や地質学をベースとした研究室であること。また、われわれが今行っている海底資源などをベースとした自然体験学習を提供したいと考え、「いし」がテーマの一つとなっています。運営メンバーが、子どもの頃から昆虫採集が好きだったこともあり「むし」を、福島県は星も非常にきれいなので「ほし」もテーマにし、「むし・ほし・いし」という三本柱でイベントを行っています。
─oviceを導入する前に、どのような課題感があったのでしょうか。
藤永さま:特にわれわれが重視しているのは、遠隔地にいて現地のイベントに参加できない子どもや、難病やけがで入院していて外に出られない、外のイベントに出られない子どもたちに学びを提供することです。また、一人親家庭など、経済的な理由で現地での参加ができない子どもたちにも、自然体験学習を楽しんでもらいたいという思いがありました。そのため、リアルな場所での開催だけでなく、オンラインでの開催は必須だと考えていました。
コロナ禍ではリアルでの開催ができなかったこともあり、Web会議ツールで開催していたのですが、一方的にこちらから配信をするのではなく、双方向のコミュニケーションを楽しめる場にしたいと感じ、適したサービスを探していたところ、oviceに出会った形です。
─オンラインの会場として、oviceを選んだ理由を教えていただけますか。
藤永さま:われわれが考えていた「双方向のコミュニケーション」を実現しやすいと感じたからです。Web会議ツールだと、どうしてもこちらからの情報を配信して見てもらうという、一方的なコミュニケーションになりがちです。そうした課題感を覚えていたなかで、当時の担当だったメンバーが、偶然展示会でoviceを知りました。
oviceのようなバーチャル空間を活用することで、オンラインの参加者も自由に交流ができると考えたのが、導入の決め手です。3Dのような複雑なバーチャル空間もありますが、oviceの場合は2Dで操作が簡単で、各自のパソコンの性能やWi-Fi環境を問わず使いやすいと感じました。
─2025年夏のイベントでは、何人が参加されたのでしょうか。
藤永さま:スタッフなどの運営メンバーを抜いた参加者数は、リアルで約60人、オンラインで約50人です。オンラインは毎年20人ほどでしたが、2025年はもう少し充実させたいと考え、人数を増やしました。

─遠隔地や入院中の子どもたちへの学びの場を提供するのも目的だと思いますが、実際に参加された子どもはいますか。
藤永さま:今年度は特別支援学校に通う子どもも参加し、現地参加の子どもたちが見つけた虫や植物を、画面越しに観察したり、研究者に質問したりしながら一緒に自然学習を楽しみました。人工呼吸器を使用した状態で自宅から参加してくれた子もおり、鉱山散策や星空観察の中継を視聴しました。その子の母親の話では、参加中は目を輝かせて楽しんでいたそうです(参考:読売新聞の取材記事)。
入院中の子どもたちに関しては、病院との調整などまだまだ課題があるため、今後さらに広めて行けたらと考えています。
遠隔地からの参加という点では、長崎県などから参加してくれた子どもたちもいました。
─Web会議ツールとoviceを併用されたと思いますが、どのように使い分けていたのでしょうか。また、工夫した点も教えていただきたいです。
藤永さま:メインの会場はoviceにし、各講義はovice上に設置したWeb会議ツールから見られるようにしました(以下画像参照)。

また、oVice社の担当者からのアドバイスを受け、オンラインで参加している子どもたちもきちんと楽しめるよう、現地の地図や写真をもとに、できるだけ現地の雰囲気を再現したオリジナルレイアウトを作成しました。実際のイベント会場を再現したovice上に、現地で撮影した植物や昆虫などの動画を設置することで、現地の様子を少しでも伝え、オンラインで参加する子どもたちにも楽しんでもらえるよう工夫しました。実際、オンラインの子どもたちもovice上を動き回って動画の視聴をしたり、積極的にプログラムに参加しているように感じたので、没入感のある空間設計ができていたと思います。

オンラインの参加者が楽しめるよう、oVice社の担当者にイベント前にアクセスしてもらい、動画などが問題なく見られるかなどを確認していただいてから、本番に臨みました。

─イベントはいかがでしたでしょうか。参加者からはどのような声がありましたか。
藤永さま:「ovice上で見られる動画などがあったおかげで、現地の自然をリアルに感じられた」といった声がありました。
実際、オンラインの参加者同士が密にコミュニケーションを取っていたのも印象的でしたね。チャットを使ったり、ovice上に設置した会議室に参加者同士が誘い合わせて入室し、会話を楽しんでいるような場面も見られました。
─チャットで印象的だったコメントなどはありますか。
藤永さま:「次どこに行く?」といった会話や、「どのプログラムがおもしろそう?」といった情報交換もしていました。
イベントが終了後もoviceを使えるようにしているのですが、「これいつまで使えるんだろう?」「イベント後も使えると良いね」といったチャットもありました。オンラインの参加者同士で楽しく交流していた印象で、中にはこのイベントのovice上で知り合い、別のイベントに一緒に参加した子どももいたようです。
─2026年のイベントで、新たに挑戦してみたいことがあれば教えてください。
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藤永さま:2026年もoviceでの開催を想定していますが、以下の2つのことに挑戦してみたいです。
1つは、「窓」という機能を使い、ovice上で直接現地の映像が見られるようにしたいです。窓を使うことで、オンラインで参加している子どもたちが、わざわざWeb会議ツールに飛ぶ手間を省ければと思っています。
もう1つは、現地で参加している子どもたちと、オンラインで参加している子どもたちの交流の場を、oviceで設けてみたいです。これまでは、オンラインはオンラインで、現地は現地でという形で、交流が2つに分かれていました。2026年は、現地でイベントに参加する子ども達用のアバターを用意し、現地参加の子どもたちにもoviceにアクセスしてもらうことで、よりハイブリッドな交流ができればと思っています。