

北海道の西いぶり地域(北海道南西部の室蘭市、登別市、伊達市、豊浦町、壮瞥町、洞爺湖町の3市3町)の移住・定住に関する取り組みとして、Webサイト上での情報発信はもちろん、オンラインでの移住イベントを開催している。
人口減少が進む地方自治体にとって、移住希望者との接点づくりは大きな課題となっています。
北海道の西いぶり地域(北海道南西部の室蘭市、登別市、伊達市、豊浦町、壮瞥町、洞爺湖町の3市3町)では、広域移住窓口の担当者2人が中心となり、限られたリソースの中で、オンライン移住イベントを継続的に実施してきました。
当初はWeb会議システムを使っていましたが、運営の煩雑さや参加者体験の制約が課題に。その後oviceを導入し、運営側の負担を大幅に軽減すると同時に、移住に関心のある方々との交流もしやすくなったといいます。
今回は、この取り組みを企画・運営している伊達観光物産公社 コミュニティ推進室の寺島寛さまに、ovice導入の背景や活用方法、そして得られた効果について伺いました。

ーまず、西いぶり地域の移住促進事業について教えてください。

寺島さま:西いぶり地域では、地域の6市町が連携して移住・定住に関する取り組みを進めています。目的は、制度や条件を一方的に伝えることではなく、まず西いぶりという地域を知ってもらうことにあります。西いぶりは、北海道の中でも比較的温暖で、交通や生活の利便性も高く、無理のない形で北海道の暮らしを始めやすい地域です。そうした魅力を感じてもらうため、まずは地域に住む移住者や担当者の雰囲気、暮らしのイメージに触れてもらうことを意識しています。
こうした考えのもと、広域の移住窓口の担当者である私と同僚の2人が中心となり、移住イベントを定期的に開催してきました。これまでに計9回開催しており、初回から2回目までは一般的なWeb会議システムを使用し、3回目以降の7回は、参加者が自由に回遊できるオンライン空間として ovice を活用しています。
ーオンライン移住イベントは、当初Web会議システムで実施されていたとのことですが、どのような課題があったのでしょうか。
寺島さま:参加者一人ひとりの関心に合わせて案内しようとすると、どうしても運営の負荷が高くなる点が課題でした。
テーマ別に話す際にはブレイクアウトルームを活用していましたが、事前準備に手間ががかかるうえ、表示される名前と申込時の名前が一致しない場合もあり、その都度確認しながら案内する必要がありました。その結果、開始までに想定以上の時間を要してしまう場面もありました。
また、参加者側から見ても、Web会議システムは画面構成がシンプルな分、どうしても説明会のような印象になりやすく、イベントとしての雰囲気や参加のしやすさという点では課題を感じていました。
ーWeb会議システム以外では、どのようなツールを検討されましたか。
寺島さま:oviceのようなバーチャル空間をいくつか比較しました。その中で、空間のカスタマイズが簡単で、自分たちの世界観や雰囲気を表現しやすい点が決め手になり、oviceを選びました。

他のバーチャル空間も機能面では似ていたのですが、サイバー空間のような見た目しか作れないものもあり、私たちの行っている “移住イベント” の雰囲気には合わないと感じました。
ー移住イベントはどのような形式で実施されているのでしょうか。参加人数も含めて教えてください。
寺島さま:イベントは、4つのテーマに分かれて話をする形式で、毎回2ターン実施しています。参加人数は毎回10〜20名ほどで、毎回参加してくださるリピーターの方も2~3人いらっしゃいますね。

ーイベントを運営するうえで、どのような点を大切にされていますか。
寺島さま:一番大切にしているのは「双方向のコミュニケーション」です。Web会議システムを使っていた頃は、登壇者が一方向に話し続ける形式になりやすく、参加者も同じ画面を見続けるしかないため、どうしても受け身になってしまっていました。
その点、oviceでは4つのテーマを同時に進行し、参加者が自分の興味に応じて自由に移動できます。歩いて近づくだけで会話に参加できる設計なので、参加者が“自分で選んで動く”という自然な体験が生まれます。実際には1つのテーマをじっくり聞く方が多いものの、1〜2割の方は複数のテーマを行き来しており、この自由度がイベント全体の活気にもつながっていると感じます。
ーレイアウトは自作されているのでしょうか。作成の際の工夫も合わせて教えてください。
寺島さま:はい。当初から ovice のレイアウトは自作しており、初期はゲーム画面のようなものや、カフェ風の演出を取り入れたレイアウトを採用していました。
ただ、4つのテーマを同時に進行する中で、どこでどの話題が行われているのかを参加者がひと目で把握できることの重要性を強く感じるようになりました。そこで、回を重ねる中で実用性を重視したシンプルな構成へと見直し、現在は ovice の空間を4色に分けることで、参加者が迷わず、自分の関心のある話題に移動できるよう工夫しています。
ーoviceに慣れない参加者もいると思いますが、どのように対応されていますか。
寺島さま:以前は、イベント前に15分ほど体験していただく“事前練習”の時間を設けていました。ただ最近は、参加者の方が事前にお渡ししたoviceのURLから自由に入場し、使い方を試してくださるケースが増えてきました。
そのため、運営側が練習時間を設けなくても、参加者自身が自然と使い方を理解してくれる流れができつつあるため、現在はよりシンプルな運営に切り替えています。
ーWeb会議システムを利用していた時と比べて、どのような変化がありましたか。
寺島さま:まず大きいのは、運営側の負担が大幅に減ったことです。ブレイクアウトルームのような部屋を作る必要がなくなり、少人数の運営でも無理なく回せるようになりました。参加者も数秒で興味のあるテーマに移動できるため、誘導にかかっていた時間を削減でき、話す時間をしっかり確保できるようになりました。
ー参加者の反応はいかがでしょうか。
寺島さま:oviceのようなバーチャル空間でイベントを行うこと自体に「おもしろい」「参加しやすい」といった声を多くいただいています。
もちろん、操作に慣れない方も一定数いらっしゃいますが、オンラインを通じて参加される方は、日常的にリモートワークやオンラインツールを使っている方も多く、操作にすぐなじんでくださるケースがほとんどです。そのため、全体としては好意的な反応が多いと感じています。
ーオンラインでこうした移住イベントを開催することは、移住促進に貢献できているのでしょうか。

寺島さま:はい、そう感じています。特にoviceを入口としたイベントにより、告知の段階から、西いぶり地域の6市町を移住先の候補として幅広く知ってもらえるようになりました。明確に移住を決めている方だけでなく、検討の初期段階にある方や、情報収集の一環として参加される方とも自然に出会えています。
以前は、東京などで開催される対面イベントを主な機会とし、その後のやり取りも電話や郵送が中心でした。そのため、物理的・時間的な制約が大きく、関われる範囲には限りがありました。現在はオンラインを活用することで、国内各地に加え、海外から参加される方も一定数いらっしゃいます。地域を知ってもらう入口を大きく広げられていると感じています。
まず ovice 上で地域の雰囲気や関わる人の様子に触れてもらい、その中で関心を持った方が、オンライン相談や各自治体とのやり取りへと進んでいく流れができています。最終的には実際に地域に足を運んでいただくことを目指していますが、移住を具体的に考える前の段階からスムーズにやりとりができる点は、オンラインならではの強みだと考えています。
地域のことをほとんど知らない状態で移住を検討し、いきなり窓口に相談するのは、誰にとってもハードルが高いものです。オンライン移住イベントを活用することで、その前段階として地域を知り、人とつながる機会をつくることができ、結果として移住検討のハードルを下げることにつながっています。そうした意味でも、oviceを含むオンラインでのアプローチは、これからの移住促進に欠かせない重要な手段だと考えています。
ーoviceを使うことの良さについて、改めてどのように感じていますか。

寺島さま:これまでの運営を通じて、オンラインで接点が生まれる参加者の中には、遠隔でのコミュニケーションに慣れていたり、ウェブを通じて主体的に情報収集を行っている方、地域の暮らしに関心を持って調べている方が多いと感じています。そうした方にとって、oviceのように自分で空間を移動しながら人や話題を選べるバーチャル空間は参加しやすく、自然な形で対話が生まれやすい仕組みだと思います。結果として、oviceを活用していることそれ自体も含めて、地域に対してポジティブな印象を持っていただいているように感じています。
ーつまり、oviceを使うことで、oviceを活用することで、参加者との関わり方に変化はありましたか。
寺島さま:はい。oviceは、参加者が自分の関心に応じて自由に動き、話を聞いたり質問したりできる仕組みなので、イベント全体として双方向のやり取りが生まれやすくなったと感じています。説明を聞くだけで終わらず、その場で気になったことを尋ねたり、話題を選びながら参加できる点が大きいと思います。
その結果、地域での暮らしや仕事について、より具体的な会話が生まれるようになり、イベント全体の雰囲気も以前より活発になりました。
オンラインに取り組むようになってから参加の仕方に変化が見られ、oviceの導入によってその傾向がよりはっきりしてきたと受け止めています。
ー最後に、今後の展望についても教えてください。
寺島さま:今後もoviceを活用した移住イベントは継続していきたいと考えています。加えて、リアルのイベントとも組み合わせ、例えば地域の特産品紹介や施設紹介など、現地の様子をオンラインでも同時に見られるようにすることで、より多くの方に地域の魅力を伝えられるのではないかと思っています。
また、現在はイベントごとに会場を作っていますが、地域住民向けの常設のovice空間を作るのもおもしろいのではと考えています。地域の情報はリアルな場で共有されることが多いですが、オンラインでも気軽にアクセスできる常設の場があれば、より広く様々な人に情報が届き、地域での人と人のつながりが広がるはずです。
さらに、他地域との連携も含め、オンラインツールをうまく活用しながら移住を呼びかけていく手法には、まだまだ可能性があると感じています。今後もoviceを軸に、地域と人をつなぐ新しい形を模索していきたいですね。