ユースケース

不登校支援・フリースクール・通信制高校でのメタバース“ovice” 活用事例5選

2023-05-31

2021年度、不登校の児童生徒数は24万4940人となり、9年連続で過去最多を更新しました。この状況を受け、学校以外の子どもたちの居場所確保が課題となっています。コミュニティやフリースクール、通信制高校などを運営する自治体や学校法人が支援にあたっています。

このような中、メタバース「ovice」も不登校児童生徒の集う場所として注目されています。オンライン空間で気軽に集まり、会話や学習活動を行えることから、実際に外出するよりも参加しやすいケースが多いとされます。

この記事では、メタバースを活用した不登校児童生徒の支援取り組みの事例をいくつか紹介します。

<参照>TBS NEWS DIG|不登校児童・生徒に「学校に行けなくても教育の機会を」親から支援求める声 2021年度の不登校“過去最多の約25万人”

事例①三重県(不登校支援)

2022年7月に「オンラインの居場所」を立ち上げた三重県教育委員会。「オンラインの居場所」は不登校の状況にある 中学生や高校生が、他者や社会とつなが るきっかけを得たり、自身の興味・関心の幅を広げたり、強みに気付いたりできるようになることを目的に、年間を通して定期開催されています。

oviceを使うことで、発言へのリアクション、ファシリテーターとの1対1の相談など、オンライン会議では不可能な動きが実現したそうです。参加者からの「面白かった」「参加しやすい」といったポジティブな感想も多く、メディアでも多数取り上げられ、個人参加の登録者がovice導入前と比べて倍増しています。

▲三重県教育委員会「オンラインの居場所」の様子

事例②宇都宮市(不登校支援)

宇都宮市では2023年5月より、oviceを使ったデジタル適応支援教室「U@りんくす」の活動をスタートしています。参加する子どもたちは、既に配布されているノート型パソコンなどで自身のアバターを操作し、担当教員や他の子どもたちと交流します。

このデジタル適応支援教室は、さまざまな理由で学校や適応支援教室、フリースクールなどとつながっていない不登校の児童・生徒が対象で、5月には小学生8人、中学生10人の申し込みがあったそうです。

自分のペースで興味関心のあるものを選べるようにとの考えから、ovice上に掲載する学習や体験系などの動画も増やしていく予定だそうです。

oviceを使ったデジタル適応支援教室「U@りんくす」 画像出典:YouTube|U@りんくす 説明会動画

<参照>下野新聞|不登校支援デジタル教室スタート メタバース活用し交流 宇都宮市

事例③学研 WILL学園(サポート校)

新型コロナウイルスの影響で中学校・高等学校が休校になるなか、いち早くビデオ会議ツールを活用して臨時のオンライン授業を開始したWILL学園。オンライン授業では、2つの点を課題に感じていました。

  • 毎回のURL精製と生徒への配信が手間である
  • 画面・音声をOFFにする生徒も多く生徒の様子がよく見えない

2点目については、講師としては「本当に受講しているのか分からない」、生徒達からは「ビデオ会議アプリは無機質である」「自分だけが受講しているようで楽しくない」といった声につながっていました。こうした課題感から、2021年12月よりバーチャルオフィスoviceを用いて、メタバースキャンパスの運用を開始しています。

導入後は、対面集団授業のライブ配信で活用するだけでなく、

  • 昼休みにリモートワークの講師が自宅キッチンでの調理の様子を映したり
  • ダンスサークルで画面共有機能を使って各々の自宅から一緒に練習したり
  • ゲームサークルのオンラインボードゲーム対戦をovice内で観戦したり

など、課外活動にも役立てています。

生徒達からも「休み時間に他生徒のアバターがフリースペースを動いていることで一人じゃない気持ちになれた」「ビデオ会議ツールだと先生たちにスペース(URL)を用意されないと繋ぐ機会がないが、oViceだとアクセスすれば誰かがいるので心強かった」という感想があるそうです。

画像出典:YouTube|【ovice活用事例/フルVer】学研エル・スタッフィング「WILL学園」

事例④ワオ高等学校(通信制高校)

ワオ高等学校はオンラインの通信制高校です。開校当初は、Zoomで授業やコミュニケーションを行っていましたが、決めた時間に集まることでしかコミュニケーションが取れないことを課題ととらえていました。

なぜなら、学校は授業が受けられる場所であると同時に、休み時間に廊下で友だちと話したり、生徒が先生に気楽に相談するために声をかけたりといった「授業以外でのコミュニケーションの場」も重要な役割を担っているからです。oviceの導入は、こうした“何気ない会話”が生まれる場所をつくるためでした。

例えば朝のホームルームでは、先生と発表を担当する生徒は顔をビデオ映像で映し出しながら挨拶をします。他の生徒はアバターで参加し、担当者による問いかけに対してはチャットやリアクションで反応を示し進行されます。顔出しをしなくても気軽に意思表示ができることを、生徒は大変喜んでいるとのこと。

生徒や教職員に好評なのは「clap👏」をはじめとするリアクション機能です。発表が終わった後に拍手の音に包まれるのは、発表する生徒にとっても勇気と自信を与えるものになっています。

2021年3月に実施した生徒を対象としたアンケートは、ワオ高等学校のようなオンライン高校の印象についても質問を設けて実施。「非常に良かった」または「良かった」の回答の詳細を見てみると、「入学前にそう思っていた」割合は51.8%、そして「入学後そう思った」割合は81.9%となったそうです。

Tweet:ワオ高等学校(学校法人ワオ未来学園)

<参照>ワオ高等学校|バーチャルキャンパス(ovice)

事例⑤WIALIS(オンラインフリースクール)

不登校の子にとって「オンラインの居場所づくり」が有効であるとは思いつつも、「ではどうすれば、オンライン上で居場所と感じてもらえるか」「スムーズにコミュニケーションを取れるか」を考えていたのが、WIALISでした。WIALISは2022年、oviceをキャンパスとするオンラインフリースクールを立ち上げました。

スクールでは全生徒とovice上でコミュニケーションが取れるので、生徒たちの状況や性格、特徴もとても把握しやすく助かっているそうです。

生徒の中には 顔出しに抵抗がある子も、みんなの前での声出しに抵抗がある子もいますが、チャットで複数名を対象にであったり、1対1であったり、シチュエーションに応じたコミュニケーションが取れる点を大きなメリットだと感じています。また、自然発生的に気が合いそうな子同士が会話し始めて仲良くなるケースも生まれています。

▲オンラインフリースクールWIALISでの授業風景

児童や生徒が離れていてもつながれる「居場所」を作りましょう

二次元のメタバースoviceなら、不登校支援やフリースクールへのアクセスがより容易になります。利点はそれだけではありません。パソコンから入室してアバターで「いるだけ」「話を聞くだけ」や「リアクション」ができるので、すでに活用している取り組みや学校ではこれまでとは異なるオンラインの教室が実現しています。学校以外に教育の場・人間的成長が可能な場があることは、より多様な人々が活躍する日本社会の実現を後押ししてくれるのではないでしょうか。

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