新型コロナウイルスの影響により、私たちの働き方は大きく変わりました。テレワーク×オフィスワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」が注目される今、
バーチャル空間「ovice(オヴィス)」を開発・提供するoVice株式会社と、リゾートエリアの会員制施設や一流ホテルでのワーケーション体験を提供する株式会社リゾートワークスは、『ニューノーマルワーク 〜脱・オフィス!ハイブリッドワークを加速させる2つの働き方〜』と題したオンラインイベントを開催しました。
今回の記事では、「企業に働き方の変革が求められる背景」「両社のサービスを企業が導入することによって起きている働き方の変化」といった“働き方の未来”について、両社CEOから語られた内容についてお届けします。
※この記事は、2021年12月14日に開催されたオンラインイベントの採録です。
ーまずはoviceのサービスについて教えて下さい。
ジョン・セーヒョン(以下 ジョン):
oviceを立ち上げたきっかけは、2020年3月に私が北アフリカで突然ロックダウンに遭遇したこと。いつ日本に帰れるか分からず、テレワークでの仕事を余儀なくされました。既存のオンライン会議ツールを使っていたものの、普段隣に座っていたメンバーと気軽に話せないもどかしさから開発を始めたのがoviceです。
「物理的に離れている人たちが、一つの場所で作業できる」そんなコンセプトで開発を始めてから約1年半が経ちます。最近は「メタバース」という言葉が流行っていますが、私たちがユーザーに提供している価値はまさにメタバースとしての価値です。
ー「テレワーク」の現状についてどう捉えていますか?
ジョン:
テレワークは単に「コロナ禍への対応策」ではなく、企業の成長戦略の中心になりつつあります。海外ではテレワークをやめる企業もありますが、それに反発して辞める人が続出しているのです。優秀な人材を確保するために、テレワーク環境はもはや欠かせないでしょう。
新型コロナウイルスの感染者数が減ってきた今も、oviceを導入する企業は以前と変わらず増え続けており、過去最高の成長率を更新しています。コロナ禍になったばかりのころは「テレワークをしなければならない」とネガティブなら理由で導入する企業も多かったですが、今は違います。ニューノーマルな働き方を見据えて、成長戦略の一環として導入するケースが増えているのです。
テレワークが一過性のトレンドではなく、本質的に価値を認められている証拠だと思っています。
ー続いて、リゾートワークスのサービスについて聞かせてください。
高木紀和さん(以下 高木):
私たちは企業の福利厚生として「ワーケーション」を提供しています。私は以前から3ヶ月に一度は沖縄でワーケーションをしており、その経験が快適すぎて、サービスとして企業に提供したいと思ったのです。
サービスの特徴は通常の半額以下の料金でリゾートホテルを利用できること。少ない負担で企業のチームビルディングなどに利用してもらっています。また、ただ安く宿を提供するだけでなく、最近は「サウナ×ワーケーション」など趣味と組み合わせたサービスも展開しはじめました。
ー「テレワーク」の現状についてはどうお考えですか?
高木:
ジョンさんと同意見です。最近はテレワークからオフィス勤務に戻ったことで会社を辞める人が増えており、明らかに私たちの働き方がアップデートされたと感じています。一度スマホを利用した人がガラケーに戻れないように、テレワークを経験した人は満員電車には戻れません。今起きている働き方の変化は不可逆的なものだと思います。
しかし、オフィスで働くことが必ずしも悪いものとは思っていません。オフィスで気軽に話せる空間や、偶発的な出会いは働く上で重要な要素です。大事なのはリアルとバーチャルのバランスをとること。週に何度テレワークするのか、企業によって適したバランスを見つけるのが重要なのではないでしょうか。
それもワーケーションで普段と違う環境で働くとチームの結束も高まります。テレワークはこれからの働き方の本流になると思いますが、自宅だけでなくワーケーションで働く自由を広げていきたいですね。
ーワーケーションに馴染みのない方も多いと思いますが、アドバイスがあれば聞かせてください。
高木:
まず最低3泊4日はすることをおすすめしています。なぜかというと、それより短い期間では移動時間の方が長くなってしまい、ワーケーションの良さを実感できないことが多いからです。ワーケーションは旅行とは違い、日中は観光できないので、余裕を持ったスケジュールを立ててください。
次にデイタイム(日中)は本気で仕事をすること。よく「リゾート地に行ったら遊んでしまうのでは」と言われますが、実際は日中にはミーティングなどやるべき仕事が詰まっていて遊ぶどころではありません。日中は仕事に集中して、夕方からは現地の風景や食事を楽しむ。そのようにメリハリをつけるのがワーケーションを充実させるポイントです。
ーワーケーションに興味はあるけど、会社の都合で実現できない場合はどうしたらいいでしょうか?
高木:
極端な意見に聞こえるかもしれませんが、会社を辞めるのも一つの手段です。ジョンさんも先ほどおっしゃったように、テレワークは優秀な人を確保するための重要な戦略となっていきます。
中には「ワーケーションをしたいけど、うちの会社はテレワークができない」という人もいるかと思います。そのような方は、最悪転職を視野に入れて考えてみてください。先ほども言ったように、オフィス勤務に戻ったことで多くの人が会社を辞めました。自分の働きやすい環境を求めて、それに合った会社を選ぶのは非常に重要な選択だと思います。
ーここからお二人にパネルディスカッションをしてもらいます。まずは、それぞれのサービスを導入している企業の特徴を教えてください。
ジョン:
特に導入企業に偏りはないですね。強いて言うなら、社内コミュニケーションの多い企業が導入するケースが多いです。営業やマーケティングなどの職種が多い企業とは相性がいいようですね。一方で非同期コミュニケーションを好むエンジニアなどが多い企業には、あまり導入されていないと思います。
最初はスタートアップがメインターゲットだと思ってサービスを展開してきたのですが、実際には規模や業界はほとんど関係ありませんでした。規模や業界よりも「リモートワークを推進しようとする意思」が大事ですね。経営者が働き方に対する思い入れがない企業にはあまり価値を感じてもらえません。
高木:
私たちのサービスはスタートアップのお客様が多いですね。大企業はテレワークには対応していても、セキュリティや労災の関係で自宅以外で働くのを制限しているケースも多いので。
また、スタートアップは若い方が多いのも関係しているのではないでしょうか。独身の方がワーケーションに向いているので、子供のいる夫婦が多い大企業は難しいかもしれません。ワーケーションは個人のライフスタイルによっても大きく相性が変わるので、導入企業には偏りがあると思います。
ーテレワークを導入しやすい企業はどんな特徴があると思いますか?
ジョン:
物理的な制限のない会社です。例えば書類をスキャンするなどの業務はオフィスでなければできないため、テレワークを導入しにくいと言えます。しかし、最近は技術の進歩によって、様々な業務で物理的な制限が取り払われてきました。データでやり取りする文化があれば、わざわざ紙をスキャンする必要もないですよね。
例えばコールセンターも自宅で働ける会社も増えてきましたし、そういう会社ではオンラインで柔軟にスケジュールを組めます。結局は業界や業種よりも、経営陣の「テレワークを実現する」という意思が重要で、その気持ちがあれば工夫してテレワークを導入できるのではないでしょうか。
また、そういう会社には自分から行動できる「高度人材」が集まりますし、既存のメンバーも高度人材になっていきます。
高木:
テレワークで働くことで、たしかに高度人材は増えますが「テレワークで働ける人の方が優秀」という考えは禁物です。例えば接客業は物理的な制限がありますが、その中には「接客のプロ」と呼ばれるような優秀な方も大勢います。
ただし、テレワークは仕事の過程が見えにくいので、シビアに成果を求められると言えるかもしれません。テレワークは「成果を出す」という信頼のもとで成り立っているので、求められる仕事のレベルも高くなります。
そのような前提の上で、自分の能力に自信のある方はテレワークを選んで幸せに働ければいいと思います。逆に言えば、企業はそのような高度人材を採用するためにも、テレワーク、ハイブリッドワークなど働き方の選択肢を用意していく必要がありますね。
ーoviceを導入するメリットについての質問を参加者からいただいています。採用で使うメリットがあれば教えて下さい。
ジョン:
説明会やオフィス見学などでoviceを利用しているケースはよく聞きます。「oviceだから特別なことする」のではなく「リアルでやっていたことをoviceでもやってみる」というスタンスが多いみたいですね。
メリットとしてよく挙げられるのは、地理的な制限がないのでイベントを開けば全国から集客できること。それだけ多くの参加者を集められますし、応募者も増えたという話もよく聞きます。イベントだけでなく採用もoviceで行うことで、一度も会わずに入社することも多いようです。
高木:
oviceを活用して「リモートワークができる」という点だけでも、場所に関係なく全国から応募が来るのは大きなメリットです。私たちのようなベンチャー企業は給料などでは大企業に勝てませんが「どこからでも働ける」という点が採用の優位性になっています。
採用は完全にオンラインで行っていますが、たまには直接みんなと会いたいので、不定期にリゾート地でみんなで集まってオフサイトミーティングをすることもあります。テレワークには様々なメリットがありますが「テレワークだけ」にした方がいいとは思いません。
どれくらいテレワークを取り入れるか、自分たちにあったバランスを見つけるのが大切ですね。
ーoviceを導入することで、どれくらいコストを削減できるのでしょうか。
ジョン:
オフィスの所在地やoviceの定着率によって違うので、一概に「いくら削減できます」と言うのは難しいですね。最もインパクトの大きいのが「オフィス賃料」なので、坪単価やオフィスをどれくらい縮小したかで削減できるコストも大きく変わります。
例えば、六本木ヒルズのオフィスを半分に縮小し数千万円のコストカットに成功したケースもあります。逆に言えばoviceを導入しても、社内に定着しなければオフィスを減らせないので賃料を減らせません。
賃料の高いエリアにオフィスを構え、oviceの定着率が高い企業ほどコストを削減できると言えますね。
ーoviceを定着させるのに、いい方法があれば教えてください。
ジョン:
oviceのファンを作って、一日中oviceにいる人を増やすことです。できれば役職のある人を巻き込んで、oviceに情報が集まるようにすると尚良いですね。
実は私たちも最初はメンバーたちがoviceを利用してくれず、寂しい思いをしたこともありました。私は一日中oviceにいるのに、みんなテキストばかりでコミュニケーションするんです。
そこで私は何か聞かれても「oviceにいるから聞きにきて」と言って、ovice内だけで情報発信するようにしたのです。それにより、oviceに集まる人も増えてきました。
一番いいのはoviceを使ってオンラインで飲み会をすることですね。同じ食事をとりながらoviceで盛り上がれば、使い方もすぐに覚えますし、抵抗もなくなります。一度飲み会を開いてから、みんなスムーズにoviceを使ってくれるようになりました。
高木:
私たちは、コアタイムはoviceに集まるのをルールにしています。無理にコミュニケーションをする必要はないので、話さずに仕事をしている方もいて、話したくなったら話せばいいんです。それくらいのゆるいルールにしているので、今はみんな心地よく働けていますね。
ジョン:
ovice内ではいろんな人がいろんな話をしているので、聞き耳を立てているだけでも面白いですよ。普通のオフィスなら聞き耳を立てていたら不自然かもしれませんが、oviceなら間違えたフリをして、話している人の近くにアバターを移動するだけでいいんです。
私は普段からBGM代わりにいつも誰かの話を聞いているので、社内の様々な情報が入ってきます。経営陣の方ほど、oviceを活用して社内の様子を探ってみるといいと思います。
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